はやしひろおのホームページ/散文系 ガット弦とバロック弓について




ガット弦とバロック弓について


2006年8月18日にバッハのブーレ(無伴奏チェロ組曲第3番より)を弾いた際の、
演奏前に行なったちょっとしたTalkの原稿です。


それでは次に、バッハのブーレを演奏したいと思いますが、 せっかくですので、できるだけバッハの時代に近い道具を使って演奏したいと思います。 楽器は同じチェロですが、弦と弓が皆さんが普段使っているものと違います。

まず弦ですが、ガット弦というものを張っています。 皆さんが普通に使っているのはスチール弦といって金属製の弦なのですが、 実はスチール弦の歴史はとても浅くて、 広く使われるようになったのは第二次世界大戦以降だと言われています。 皆さんよくご存知のカザルスは主にガット弦を使っていたそうですが、その音色も非常に気に入っていたようです。 またフォイアマンはスチール弦がいいと言っていたそうですが、 わざわざそう言うということは、それだけガット弦が広く使われていたということです。 そのガット弦は羊の腸から作るのですが、 羊を殺して、まだ温かいうちに腸を取り出して、皮や粘膜を取り除いて、 残った筋肉質で繊維性の部分をよって作るというもので、 人間は昔から残酷な生き物だったんだなぁと思います。 今日はa線とd線は羊の腸をよっただけの裸のガット弦を、 G線とC線はそれに銀を巻いたガット弦を張っています。

次に弓ですが、いわゆるバロック弓というものです。 見ていただければわかりますが弓のそりが普段使っている弓とは逆です。 現代の弓だけを見ているとなぜ弓と呼ばれるのかわかりませんが、 昔の弓は本当に弓の形をしていたんだということがおわかりいただけるかと思います。 また木の材質が違って、現在の弓はペルナンブコというブラジル原産の木で作られていますが、 バロック弓はスネークウッドと言って独特の模様のある木が使われることが多いです。 余談ですが、ペルナンブコは弓を作るためにあまりにたくさん伐採され数が少なくなってしまったので、 ワシントン条約で輸出入が禁止されてしまいました。 今現在出回っている弓はオールドのものか、 新作なら職人さんがストックしておいた木材で作ったものだと思われます。 現在ではカーボンファイバーで作られた弓もあって、改良されてどんどんよくなっているようです。 音楽の道具も世の中の流れと同じく、どんどん変わっていくものなのだと思います。

それでは、バッハの無伴奏チェロ組曲第3番からブーレを、 バッハが実際に聴いた音に近い(かもしれない?)演奏でお聴きください。

(2006.8.18)