
ザラ・ネルソヴァは1918年にカナダで生まれ2002年にニューヨークで亡くなった、主にアメリカで活躍した女流チェリスト。この5枚組セットは彼女の素晴らしい演奏が存分に堪能できてかなり貴重です。
この人はほんとに渋い音色で力強く情熱的に、そして一音一音ごまかしをせずきっちり弾く人で、こちらも真剣に聴かないといけないとついつい背筋を伸ばし襟を正してしまう。ベートーヴェンのソナタ全曲、ドヴォルザークやサン=サーンスのコンチェルトなど、派手さはないけどどっしりと聴き応えあり。ラフマニノフのソナタはいくらなんでも渋すぎるか。コダーイの無伴奏はどの音もしっかり弾いてて(特に第3楽章)、シュタルケルのかっ飛ばす演奏とは対極。
そしてこの女流チェリストの真骨頂は、バーバーのコンチェルト(作曲者自身の指揮)、それにブロッホのシェロモ、荒野の叫び(アンセルメの指揮)、ユダヤの生活より(作曲者自身のピアノ)でしょう。作曲者との共同作業で作り上げた解釈、作曲者のお墨付き、正統な演奏です。バーバーのコンチェルトは録音後にオーケストラのあるチェロ奏者が「あなたの演奏を聴いた後では、自分はどうやってチェロを続けていったらいいでしょうか...!」といって自分の楽器を壁に叩きつけて粉々に壊してしまった、という有名なエピソードがあります。またブロッホのシェロモでは、イッサーリスのヴィブラートを控えるという意見に、作曲者との交流時の経験をもとに反対しています。(ICSのインタビューより) こういう作曲者自身の意図をくんだ人の意見や演奏はとても興味深いものがありますね。
後年は教える方の仕事に力を注いだようで、録音の数も少なく、あまりCDに復刻されることもありませんでしたが、もっと聴かれるべき真面目な実力派のチェリスト。知名度が上がることを期待してます。

ブログを使って、新たにこんなコーナーを作ってみました。我が家の音盤棚をウェブ上に再現してしまおう!というコンセプトですが、本当に再現しようと思ったら一生かかっても無理な気がする。まぁその時々のよく聴くor見る音盤をゆっくりと。
記念すべき第一弾は、廉価盤BOXセットで有名なBrilliantClassicsより、ロストロポーヴィチが旧ソ連で1957年から1971年に録音したものから選んだセット物。これはロストロポーヴィチというチェリストの凄まじさを嫌と言うほど味わえる一品です。ロストロポーヴィチといえばカラヤン&ベルリン・フィルとのドヴォルザークのコンチェルトの超有名録音があって、僕もその録音での印象が強かったのですが、その後様々な録音を聴くようになって、ロストロポーヴィチのイメージが全然変わってきた。たっぷりと鳴らすカラヤンとの録音は、むしろのっぺりした雰囲気で緊張感に欠ける。旧ソ連でのロストロポーヴィチはもっと緊迫感があり、しっかり鳴らすけど同時にどんどん切り込んでいく。
そしてテンポもどんどん速くなっていきます。サン=サーンスやハイドンのコンチェルトのありえないテンポでも破綻しないのがさすが。ムラヴィンスキーに匹敵するかのような緊張感・切迫感の溢れる演奏が満載ですが、そのでいてストラヴィンスキーの小品やオネゲルのコンチェルトでは色物を色物っぽく弾いていて、どんな曲でもござれって感じ。ハチャトリアンやチシチェンコ、ボリス・チャイコフスキーといった旧ソ連の作曲家の曲や、ロストロポーヴィチの録音では珍しいシューマンの「民謡風の5つの小品」(トラックの切り方間違っている上に1曲入ってない!)やラロのコンチェルトも入ってます。