ビオラのカクシュカさんが病気のためにキャンセル、代わりに彼の弟子だったというイザベル・カリシウスさんが入っての演奏会となったけど、なんというか皮肉なことに、僕が今まで生で聴いた中で一番の演奏だった気がするよ。彼らはあまりに完璧な演奏をするのでそれだけでは飽き足らないのか、最近はライブのノリというか感興に富んだことをやってそれが逆に時折支離滅裂な印象を受けることもあったんだけど、この日は最初から最後まで、一貫したコンセプトというか流れみたいなのを感じた。それが円熟を増したためなのか、曲に合ったからなのか、メンバーが違うから守りに入ったのか、たまたまなのか、僕にはわからなかったけど。ともかく彼らの集中した雰囲気というのは本当に生演奏を体験した者でないとわからないね。あのコントラストと立体的な響きは他の団体とは一線を画している。常に格の違いを見せつけています。
確かにビオラの女性は他の3人に比べて音が平坦で、こういう人たちが4人集まるとハーゲンやエマーソンのように平べったい響きになってしまうんだろうとは感じた。だからといって別に特別な違和感があったわけでもなく、世界最高のカルテットの中で遜色なく弾いていたのは素晴らしいとしか言いようがない。
弦楽五重奏曲ではハインリヒ・シフが加わる。実はこの曲4年前にも聴いてるんだよね。その時は原田禎男さんが入って、1人だけ違う雰囲気を醸し出していてそれはそれで楽しかったんだけど、シフさんは響きがとても似ている。チェロのエルベンさんと同じ先生だったらしくて仲もいいのか、妙に息が合っていた。チェロ2本のユニゾンになるととんでもない爆音っぽい響きを作っていた。チェロ2人vsその他3人という図式ができあがっていました。その他3人の方も、特にバイオリンの2人は、弓の動き、幅もスピードも全く同じに動くのには驚愕しましたよ。2ndVnのシュルツさんの存在感が以前に比べてはるかに増した感じ。しっかり鳴らして主張するところは主張する。1stVnに合わせるところはしっかり合わせて弾きやすいようフォローする。彼らの演奏から感じる大きなコントラストは多くを彼に因っていると感じた。1stVnのピヒラーさんは相変わらずの硬い右手で鳴らすべきところはガシガシ弾く。でも色っぽい小さい音も出すんだよね、あの硬い右手でなんでって思うけど。敢えて聞こえないくらいの音で弾いて中間音のビオラを聴かせる箇所もあり、面白かった。
全体的にテンポは速く、最近の世間の傾向に準じていました。「死と乙女」では途中で疲れたのかミスが2つほどあったけど、携帯電話が2回も鳴ったり演奏中にかなりな人の出入りのあった客席を前にして、あれだけ集中力を保てるというのは逆に尊敬に値すると思います。